濱中 淳宏 |
以前、「発明の外延を明確にすること」について所感を述べさせて頂きました。明細書を作成する上で重要な点、特許出願の依頼に際して考慮していただきたい点として、今回は、明細書に用いる用語について述べたいと思います。
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発明の外延を明確にする上で、用語の意味は重要です。特に、クレームに記載される用語の定義を、明細書の中でどのように担保するかが重要です。ここで、明細書に記載される技術用語を、一般的用語、当業者用語、先進的技術用語および独自用語に分類して説明します(私の勝手な分類です)。
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- 一般的用語は、市販の国語辞典などに記載されている用語であり、明細書に記載しても特に疑義が生じなければ、すなわち技術的見地から一義的に解釈できるのであれば、定義を記載せずに、クレームに使用しても構いません。
- 当業者用語は、JIS用語辞典、市販の技術用語辞典、研究論文などに用いられる技術用語であり、その解釈が当業者間で定着している用語です。当業者間で通常用いられる意味として使うのであれば、定義を記載せずに使用することができます。
- 先進的技術用語は、当業者用語として定着はしていないが、最新の研究論文などで見かけるようになった程度の用語です。発明者は、当業者用語として認識している場合が多いのですが、一部の研究者等にしか通じない場合があり、定義を記載しておく必要があります(当業者用語として解釈が固まっていくのか、独自用語(造語)に終わってしまうのかは予測できませんから)。
- 独自用語は、発明者の会社内でのみ使われる用語、本件明細書に限った用語などであり、当然に明細書中に定義を記載すべきものです。
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| 先進的技術用語と独自用語とは、代理人である我々には意味が分からない場合が多いので、発明者に問い合わせて定義を記載することになります。先進的技術用語にしろ独自用語にしろ、定義さえ記載していれば、後々権利解釈の上で問題になることは少ないのです。 |
| さて用語法で問題となる事例をあげておきましょう。 |
- 一般用語または当業者用語を組み合わせて、先進的技術用語または独自用語として用いる場合があります。代理人は、一般用語+一般用語にしか解しません(1+1=2)が、発明者は、1+1=3or4の意味で使う場合が多いので要注意です。例が悪いのですが、ルータは、最適経路を計算する「経路制御(ルーティング)」と、パケットをポートから送出する「転送制御(フォワーディング)」とを有しています。「経路制御を行うルータ」と言うと正しいように思いますが、「経路制御」を狭義に解釈すると、転送制御を含まないルータになってしまいます。
- サ変名詞+名詞という造語もくせものです。サ変名詞を動詞型にして意味を考えたときに、能動、受動または使役のいずれかが不明であり、結果として用語の意味が不明瞭になる場合があります。これも例が悪いのですが、「変調信号」を、「変調された後の信号」、「変調するための原信号」、「変調される搬送波信号」のいずれかに解釈するようなものです。
- 用語の統一も重要です。第1に、省略は禁物です。「××を送信する通信制御部」の後に、同じ通信制御部でありながら「××を受信する制御部」と記載したとします。通信制御部と制御部とは、別の構成要件と解釈されるおそれがあります。
- 第2に、発明者は、広い権利範囲を取得するために、当業者用語で表された具体的名称を、一般用語、略称、俗称に変えてしまう場合があります。一見、発明の範囲が広がったように見えますが、発明の外延が不明確になるだけで、記載不備にあたる恐れの方が強いと思います。
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| 平成6年改正により、補正、訂正の要件が厳しくなりました。誤記の訂正、不明瞭な記載の釈明を除けば、発明の詳細な説明に新たな用語を加えることは、新規事項の追加となります。また、用語の解釈が後々問題となり、この用語の意味は、こういう意味だったと言っても後の祭りです。用語の定義と、用語の統一には、細心の注意を払ってください。 |