谷・阿部特許事務所
 知的財産権の最新動向(第1話~第11話までを毎月連載)
 ※ 本論文は、『冷凍』2004年2月号 第79巻 第916号「小特集」に寄稿、著作権は谷義一に帰属。


第8話 特許権の権利行使

 取得した特許を利用して市場の独占を図るとき常に問題となるのは,その特許発明を模倣される侵害行為である.これに対し,普通は警告し,それでもなお侵害を止めないときは訴訟を起こすこともある.また,ライセンス交渉,ライセンスの更改交渉において,交渉がうまくいかずに訴訟を起こす場合もある.

 侵害者の製造,販売を阻止する有効な手段は,仮処分の申立であろう.半年以内で裁判所の判断が下される.本訴を提起する場合は,製造や販売の差止めを請求し,必要に応じて損害賠償を併せて請求することも多い.最近では,第一審裁判所の判決が17月程度で下されており,いずれにせよ,迅速な解決を期待できる.

 プロパテント時代に突入した現在,裁判上も特許権者に,より有利な扱いとなってきている.1998年(平成10年)に改正された民事訴訟法と特許法,そして1998年(平成10年)に下された均等論の最高裁判決(「ボールスプライン事件」),さらには2000年(平成12年)に下された,明らかな無効事由については侵害裁判所で判断できるとした最高裁判決(「キルビー特許」事件)が契機となっている.特許権の存在を知らずして特許侵害している者に対しても,権利行使される可能性が増大している.逆に言えば,ビジネスに関連して,特許権を保有する意識を高揚させることが重要なのである.

 また,民事訴訟法の改正を受け,2004年(平成16年)から,特許権,実用新案権,回路配置利用権,プログラム著作権に関する事件については,地裁レベルでは従来と同じ東京,大阪地裁の専属管轄とするが,その控訴審は東京高裁のみの専属管轄と定めた.改正の意図は,より専門的判断を下せる環境を作り,審理のいっそうの迅速化と判決の予測性を向上させることである.なお,意匠権,商標権,その他の著作権,不正競争防止法については,一般的管轄に従って提起することになっている.新たに専門委員制度も導入され,100人以上の弁理士や技術専門家が専門委員として裁判に関与することになった.その先には,特許裁判所の構想,技術系裁判官の登用も視野に入ってきている.

 特許庁が審査の迅速化を図るべく,ここ5年間で審査官を約500名増員し,権利付与のスピードアップを図るのと相俟って,権利行使の分野においても,迅速で信頼のおける裁判制度の構築が急ピッチで行われており,日本が国を挙げて知財立国の実現に向け取り組んでいる姿勢がうかがえる.


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