谷・阿部特許事務所
 
審査官からの連絡

 最近,審査に係属中の事件について,審査官から連絡を受けることが多くなった.連絡の内容は,審査官から通知された拒絶理由に対する応答に関し,より具体的には,先にした応答により一部の拒絶理由が解消されていないが,その一部の拒絶理由を補正により解消することを前提に特許査定できるので,補正をする意思があれば,補正案を提出することができるという内容である.

 審査のフローによれば,一般的には審査官から通知された拒絶理由に対する応答により,当該拒絶理由が解消されなければ,拒絶査定される.拒絶査定された出願に係る特許請求の範囲,明細書,図面を補正するためには,拒絶査定不服審判を請求する必要がある(特許法第17条の2第1項ただし書き第4号).しかし,拒絶査定不服審判を請求することは請求人にとって大きな負担になるばかりではなく,権利取得を遅延させる要因となる.

 上記の連絡に応答して,補正案を提出すると,審査官によって拒絶理由が解消されたかどうかが判断される.複数回補正案を提出する場合もある.審査官によって拒絶理由が解消されたと判断されると,拒絶理由が通知され,正式に補正をする機会が与えられる.
 この結果,出願人は,拒絶査定不服審判を請求することなく,特許請求の範囲,明細書,図面を補正することができ,早期に権利を取得できることになる.

 審査基準 第Ⅸ部 審査の進め方の第2節8.1 (4) 補正の機会を与えることにより特許査定できる場合によれば,拒絶査定不服審判請求後の前置審査においては,審査官は,拒絶査定不服審判請求時の補正の適否(同法17条の2第3乃至5項)を検討し,軽微な記載不備等,補正の機会を与えることにより特許査定できると認められる場合は,拒絶理由を通知することができ,また,面接等を活用して請求人との意思疎通につとめ,どのように補正すればよいか請求人に理解できるようにするとされている.

 審査段階においても,同様の運用がされていると考えるのが妥当であろう.実際に私が経験したものについても,新規性・進歩性についての拒絶理由は無くまたは既に解消されていて,記載不備についての拒絶理由のみが残存しているとされたものばかりである.

 ここで紹介した審査段階における審査官からの連絡は,出願人にとってメリットが大きいと考える.しかし,審査官からの連絡されるのは,軽微な記載不備等,補正の機会を与えることにより特許査定できると認められる場合であって,新規性・進歩性の拒絶理由等,軽微とは言えない補正の機会を与えるものでは無いという認識が必要だろう.
 結局の所,審査官からの拒絶理由通知に新規性・進歩性の拒絶理由が含まれている場合には,その拒絶理由通知に対する応答によって,新規性・進歩性の拒絶理由を解消する必要があり,そうしなければ,出願人は,拒絶査定不服審判を請求して,さらなる補正の機会を得なければならないのであろう.


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