1. はじめに
世界知的所有権機関(WIPO)の発表によると、各国・地域特許庁への特許出願件数のランキング(2004年)でトップ5を占めるのは、日本、米国、韓国、中国、欧州です。グローバルに企業活動を展開する企業においては、近年、複数の国・地域で特許を取得しようとするケースが増大していますが、WIPOのランキングによれば、これら5つの国・地域が相対的に高い重要性を有していると判断できます。
これらの国・地域のうち、日米欧および中国については各種書籍なども刊行され、情報を得やすいと思います。しかし、韓国については距離的に一番近い国でありながら、言葉の問題などもあり、情報を得にくい環境にあります。
このため、今回は韓国の特許制度について採り上げ、日韓の特許制度、とりわけ、特許要件の比較を行なうことで韓国の特許制度についての理解を深めたいと思います。
2. 日韓の特許要件の比較
(1) 日本国特許法(以下、「J特」とする)49条各号では、拒絶理由が限定列挙されており、これらの拒絶理由に該当しなければ特許査定を得られます。一方、韓国特許法(以下、「K特」とする)62条各号においても拒絶理由が限定列挙されており、これらの拒絶理由に該当しなければ特許査定を得られます。この点は日韓両国とも同じです。
以下、J特49条各号とK特62条各号の内容を比較し、共通点と差異点を整理したいと思います。
(2) 共通点
(a)新規事項追加禁止(J特17条の2第3項、K特47条2項)
韓国では韓国語で出願しなければならないため(K特施規4条1項)、J特17条の2第3 項にある誤訳訂正書についての規定はありませんが、実質的な差異はありません。
(b)外国人の権利の享有(J特25条、K特25条)
(c)産業上利用性(J特29条1項柱書、K特29条1項柱書)
(d)新規性(J特29条1項各号、K特29条1項各号)
韓国では2006年の改正により公知公用の基準が世界主義へと改正されました。
(e)進歩性(J特29条2項、K特29条2項)
(f)拡大された範囲の先願の地位(J特29条の2、K特29条3項)
(g)特許を受けることができない発明(J特32条、K特32条)
(h)共同出願(J特38条、K特44条)
(i)先願(J特39条1項乃至4項、K特36条1項乃至3項)
実用新案登録出願に基づく特許出願の規定(J特46条の2)が含まれていますが、実質 的な差異はありません。
(j)条約違反(J特49条3号、K特62条3号)
(k)いわゆる冒認出願(J特49条7号、K特33条1項)
(3) 差異点
(a)記載要件(J特36条4項1号・6項・37条、K特42条3項乃至5項・45条)
「発明の詳細な説明」
J特36条4項1号は、平成6年改正により従前の「その発明の目的、構成及び効果を 記載しなければならない」という規定が改められました。
一方、K特42条3項は、「その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない」 と規定されており、平成6年改正以前のJ特36条4項と同じ構成になっています。
「特許請求の範囲」
J特36条6項は、特許請求の範囲について「発明の詳細な説明に記載したものである こと、発明が明確であること、請求項の記載が簡潔であること、省令に定める記載要件に 合致すること」を求めています。
一方、K特42条4項及び5項では「発明の詳細な説明によって裏付けられること、発 明を明瞭かつ簡潔に記載すること、発明の構成に欠くことのできない事項のみ記載するこ と、大統領令に定める記載要件に合致すること」が求められています。このうち、「発明の 構成に欠くことのできない事項のみ記載する」については平成6年改正により改正される 前のJ特36条と同じ構成になっています。
「単一性」
J特37条は「技術的関係を有する」と規定するのに対し、K特45条は「1つの総括 的発明の概念を形成する」と規定しています。
(b)J特49条5号及び6号は、日本のみにある規定です。
前者はJ特48条の7の通知が出され、補正書又は意見書の提出によってもなおJ特36 条4項2号違反になる場合は拒絶される旨を定めており、後者は外国語書面出願に記載した 事項の範囲内で明細書等を記載しなければならない旨を定めています。
(c)K特62条6号(分割出願)及び7号(変更出願)は、2006年改正により追加された規定であり、韓国のみにある規定です。
K特52条1項は、出願当初明細書に記載した範囲内で分割出願をしなければならない旨 を規定しており、これに違反すれば拒絶となります。日本では分割出願に新規事項が含まれ ていても新規事項に関する部分について遡及効が得られないだけで、出願自体は適法に係属 します。
K特53条1項は、出願当初明細書に記載した範囲内で実用新案登録出願から特許出願に 変更しなければならない旨を規定しており、これに違反すれば拒絶となります。日本では変 更出願に新規事項が含まれていても新規事項に関する部分について遡及効が得られないだけ で、出願自体は適法に係属します。
2006年10月27日
藤原 弘和 |